フォントストーリー(Story of the font)
Chapter3:ソリューションフォント 印刷用:「筑紫明朝-LB/RB」



フォントワークスのLETSフォントには、「ソリューションフォント」として提供しているフォントがあります。
「ソリューションフォント」とは、フォントワークスの既存フォントを<使用方法や媒体に特化してリデザインまたはチューンナップしたフォント>です。現在では、印刷用/コミック用/放送用と3種類のソリューションフォントがあります。

フォントワークスがサードパーティーとして初めてフォントをリリースしたのが、1990年。当時は、印刷などの紙媒体で使用することを主な目的としてフォントのデザインを行い、リリースしていました。
しかし、印刷の仕組みや出力機の解像度が飛躍的に向上したこと、さらには、デジタルフォントのニーズが紙媒体だけにとどまらず、テレビをはじめとした放送、アニメ・ゲームなどのデジタルコンテンツから、Webなどのディスプレイ表示などへと多様化する中で、 フォントメーカーとして<使用方法や媒体に特化したデザイン>のフォントも提供するようになりました。
これを「ソリューションフォント」と呼び、フォントワークスより<開発者目線の使用方法や媒体を提案するフォント>として提供しています。
今回は、この「ソリューションフォント」の第一弾として、「筑紫明朝-LB/RB」誕生の経緯や提供フォントの特長をご紹介いたします。

▲フォントワークスが提供している、ソリューションフォント。



印刷時の“かすれ”や“にじみ”を軽減した「筑紫明朝-LB/RB」

「筑紫明朝-LB/RB」は、フォントワークスコレクションの筑紫書体シリーズとして、LETSで提供している印刷用のソリューションフォントです。

「筑紫明朝-LB」は、「筑紫明朝-L」と共に2003年に誕生。「筑紫明朝-RB」は、「筑紫明朝-R」と共に2004年に誕生しました。

「筑紫明朝」のデザインコンセプトは、「本格的な長文本文用明朝体として、活字、写植時代の本質を踏襲し、明朝体とはどうあるべきかを最大限に考慮すること」そして、「オフセット印刷においても活字のようなインクの溜まりが見えてくるような、どこか懐かしさを持ちあわせていること」です。
最初に制作を行った「筑紫明朝-L」は、書籍などの紙媒体において、紙色が<白>を基調とする、小説や、文学史など、長文の本文用として使用されることを想定し制作しています。

▲「筑紫明朝-L」



一方で、「白地」ではない雑誌などの写真や地紋、また色の上に重ねて表示する使用方法を想定した「筑紫明朝-LB」を制作し、同年にリリースしました。
制作の背景は、「背景に色を敷いたり、写真などに文字を重ねる際に、細いウエイトでも、美しく読める明朝体を開発してほしい」という一部のデザイナーの声から実現に至りました。

▲「筑紫明朝-L」と「筑紫明朝-LB」、「筑紫明朝-R」と「筑紫明朝-RB」の比較。横線だけではなく、曲線や縦線を太らせている。



その「筑紫明朝-LB/RB」は、「筑紫明朝-L/R」をそれぞれ、横画とともに縦画も太らせて濃度を上げた書体となります。黒地(地紋)の上に白抜き明朝体で印刷されたときに相当するウエイトと同じ太さに見える「ブラックタイプ」を表しており、 黒地に「筑紫明朝-LB」を使用すると、白地に「筑紫明朝-L」を重ねたときと同等の太さに見せることができます。

上の画像を比較すると、横線だけではなく、縦線や曲線も各部分で太くしていることがわかります。こうすることで、ただ太いウエイトの明朝体を使用しなくても、紙面濃度が濃くなり、ハッキリと読みやすくなります。

また、細い明朝体を写真や黒地の上に重ねて使用しても、“かすれ”や“にじみ”を軽減できる書体として、様々な媒体で使用されることになりました。

白抜き明朝体としての使用だけではなく、本文用の書体としても、充分にその美しさを発揮できる書体として確立しているのです。



「筑紫明朝-LB/RB」へのコメントと使用事例 -デザイナー:鈴木 一誌氏  「力強さを表現できる書体」

装幀をはじめ、本文を含めた書物全体のデザインを手がけるブックデザイナーの鈴木氏が、以前、LETSサイトの会員さまインタビューコーナーで「筑紫明朝-LB/RB」を次のようにお話くださいました。

筑紫明朝はCTP(コンピューター・トゥ・プレートの略。DTPデータをもとに、印刷版に直接画像を焼き付けて現像する方法を指す)時代の明朝と、言えるんじゃないですかね。比較的に横画がしっかりしているし、目にもやわらかいし。
ユーザーとして希望しておきたいのが、CTPのタイプによってだいぶ文字の見え方、太さが違うんですよね。樹脂版のCTPとかネガから焼くCTPとかいろんなタイプの組み合わせで、文字の太さがどのように確保されるかっていうのは、全く未知数。バラバラの状態で全国展開している。
以前明朝体で、ウエイトMを使用したにもかかわらずLにしか見えないんですよ。あんなに細いんだったらウエイト1つ上げときゃ良かった……、なんて思っても後の祭りなんですよ。。CTPとの相性でどうするだとか。CTPは今までと違って刷版がないから焼きの調整ができませんから、せめてインクの盛り具合くらいしか打つ手がない。
筑紫明朝-LBは、細くなる傾向が刷版にある時はいいかもしれない。

▲ 「筑紫明朝-LB」
『遊撃の美学 映画監督中島貞夫』河野真吾編、ワイズ出版、2004年





次回は、コミック用のソリューションフォント 万葉古印ラージ/コミックミステリ/コミックレゲエをご紹介します。  つづく